「新潟星紀行」沼澤茂美


第9回96年3/3


「続・星の降る池」

新潟の伝説が海を越えて



 先週ご紹介した、神林村大池に伝わる「星の降る池」。いくつもの星座が登場し、時間と共に星空が移り変わる様子までも正確に表現されています。私は、コンピューターでその星空を再現したり、実際の星空に当てはめたりして、まず、そこにでてくる星座の同定を試みました。しかし、いくつかの星座は、とても難解なものでした。
 後に、八ヶ岳山麓で行われた、プラネタリウム解説者の研修会でこれを発表し、内容解明の糸口をつかもうとしました。予想通り、同様の話が他の地域の存在するという情報は、皆無でした。しかし、参加者の一人、台本作家である友人の細君から予想もしない情報が飛び出したのです。
 「似たような話が、フランスにあったと思う。・・」
後に送られてきた資料を見て愕然としました。
ドーデ作・「風車小屋便り」の一説「星」。その内容は、冒頭の叙情描写から、登場する星座、転結までも完全に同じものだったのです。
 確かに、フランス・プロバンス地方の遊牧人に伝わっていたという背景は、星の話が生まれる土壌として納得のゆくことです。 1等星シリウスについて「たいまつのように輝く」と表現していますが、緯度の高いプロバンス地方の方が、大気の影響でこの星がぎらぎらと赤っぽく輝やき「たいまつ」の表現に近いと思われます。新潟のシリウスは青白く煌々としています。
 ただ、両者の話が登場した年代が近接しており、どちらが模造とは言えません。 今、この話題は、文学研究家も交えて少なからぬ波紋を広げているところです。
 いずれにしろ、この宝物のような話が、郷土に存在したことは事実。その情景が、清らかな自然と共に未来永劫に残り続けることを切望します。


(キャプション)
八ヶ岳山麓、川崎市立の天文台で星空をたどりながら、謎の解明に取り組んだ一こま(超高感度CCDカメラで撮影)


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