第45回96年11/10
「星の降る池探訪」
守ってゆきたい原風景
美しい紅葉が里に降りる頃には、立冬も過ぎ、青い空、満天の星空が貴重な季節になります。
星の降る池の伝説が残る岩船神林の大池には、すでに多くの白鳥が飛来し、昼夜を問わず甲高い声がこだましています。今から20年ほど前には、1羽の白鳥も見ることなく、清らかな水をたたえ、ジュンサイが一面に採れたのだと言います。
今でもこの近辺の人たちの中には、昔はひっそりと静かだった大池に「あそこには星が降ると言われていたよ。」と、言い伝えを知る人がいます。
「むかしむかし、松林に囲まれた新保の大池には星が降ると言われていたそうです。星はすべてが生きていて、人が寝静まった頃には、この神秘な世界が寂しさや沈黙の中に目を覚まします。そんな時は、泉の音が耳をつき、池には小さな炎が燃え、林の中のすべての精が星の精と話しはじめるのです。すると、池の底の小さな光から、長い湿っぽい叫び声が大きく光っている星の方へ近づいて行きます。そして、その叫びが一つの光を運んで、息でもするように大池の底へ飛び込んでしまう--。こんな時、里人は「星が流れるのは里人の誰かが極楽にはいったしるしだ。だから、仏様の後光に打たれたと同じように、手を合わせて拝むと幸せになるんだ。」と言っていました。この大池の真上に続いている星々が「極楽の道」という星の群(冬の天の川)で、あの星達は地獄から極楽まで続いていると言われています。・・・」(中村忠一氏著「岩樟舟夜話」に収録された「星の降る池」の一部を引用、現代風に加筆しました)
大池のまわりの畑で会ったおばさんの話では、昔、この一体はすべて松林に囲まれていたのだそうです。今は、すぐそばを国道345号が通り、白鳥をみにひと人でにぎわい、県の森林浴の森百選にも選ばれています。近日中には、池の端に展望台が作られると言います。大池の周辺には、さまざまな事業計画があり、これから数年の後に大きく変貌するかもしれません。
伝説の中に残る遠い日の美しい情景は人間の業と共存することは出来ないのでしょうか。
自然の恩恵は自然の中にこそあり。
白鳥の飛来した大池にかかる「星の降る池」の星々。オリオン座の左下の明るい星が狼星。(11月3日早朝撮影)
どんど焼きと星空 |