「新潟星紀行」沼澤茂美

第141回
1998/10/1


ジャコビニ群出現!

晴れ間を求めて東奔西走


 
 「ジャコビニ流星雨は本当に見られるのだろうか?」不安と期待の交錯する中で、その日は近づいて行きました。NHKは、新開発の超高感度カメラを用いて、この流星雨をとらえようと計画し、私は、その撮影地を決めるために、3日の夜から群馬、新潟の各地を走りまわりました。
 多い日は夜中650キロを走行し、群馬・新潟の両県にまたがり数カ所の撮影地を選定しました。しかし、天候の変化は予期せぬ方向へ進みました。全国的な雨、そして、西日本からの回復。NHKの撮影班は予定を変更して2班に分かれ、メインとなる巨大なカラーカメラとハイビジョン収録機器を装備した専用車を岐阜に、機動性に富んだもう一班は、最後まで撮影地を決めかねていました。
 当日は、典型的な冬型に落ち着きましたが、太平洋側の山沿いも雲が流れる不安定な条件の中、最終的にNHKは、埼玉県秩父にある東京大学堂平天文台に、私は独自に赤城山南山麓に落ち着きました。
 赤城山頂からちぎれ飛ぶ雲片を気にしながらも、透明度の良い空の状況は、満月過ぎの月明かりの中でもかなりくらい星まで見せてくれました。超高感度ビデオカメラは肉眼よりもはるかに暗い星をとらえています。宵の頃は、ジャコビニ流星の飛んでくる中心方向(輻射点)は、空高く位置しています。
 やがて、視界にゆっくりとした明るい流れ星が飛び込んできました。典型的な「ジャコビニ群」の流星です。出現極大の年以外ほとんど見ることのないこの流星を確認し、期待は高まります。次第に増える流星の数、ビデオにも大小の流星が写りはじめました。
 30分間に1個程度の流星は、午後9時半過ぎには突然10個程度に、10時から10時半の30分間には一気に20個近くまで増えました。いよいよ大出現か・・、疑う余地はありません。
 ところが、ジャコビニ群の流星数は、その後急速に減少し、夜半以降数えることはなかったのです。
 長野や雲の切れ間から観測できた新潟の観測仲間からも携帯電話での報告が入ってきました。彼らは同様にピークを観測し、その後急速に減少する、典型的なジャコビニ流星群の活動をとらえていました。岐阜や秩父で撮影中のNHK撮影隊も、いくつかの流星を記録することができたようです。
 9日の早朝にピークが来るという専門家の予想はまたもはずれてしまいました。 その後もジャコビニ流星の雨は降ることはありませんでしたが、13年に一度の、ほんの1時間にも満たない珍しい流星群に遭遇でたことは、幸運でした。
 
 
キャプション:
超高感度ビデオでとらえたジャコビニ流星群の流星を同一画像に描いてみました。放射状に出現する流れ星の中心が輻射点です。(長辺の画角は約40度です)

観測結果

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